Nobuto Osakabe Photographer

vol.9 りかえしくりかえし

今年の4月から1歳の息子が保育園に通い始めた。
基本的に行ける時は僕が朝送っていくんだけど、初めの頃息子は毎日泣いていた。置いていかれる恐怖なのか、別れが寂しいのか、必死で訴えてくる泣き声に、僕も悲しくなり少し泣きそうになっていた。
無理させているんじゃないか、性格が歪んじゃうんじゃないかとか、ものすごい罪悪感もあった。
それもGWをすぎ、6月になるころには保育園にも慣れ始め、僕にバイバイする余裕まで出てきた。今ではバイバイもおろそかに、すぐに先生やほかの子の輪に入っていく。まだ言葉が話せないけど、いろんなことを理解できるようになっているんだと思う。
たまにお迎えに行くと、大きくて持てない自分のカバンを引きずりながら、満面の笑みで歩み寄ってくる。嬉しそうな顔が嬉しい。靴を履かせると一目散に外に飛び出していく。一緒に手を繋いで歩いて帰る時間は、とても幸せだ。

保育園とうちは、自転車で5分もかからない、ベビーカーでも10分くらい。息子と歩いたら、寄り道が多いから30分くらい。
この道を、今年は何回往復したんだろうか。
会社員ではない僕は、毎日同じ場所に行くことがないので、毎日同じ道を通ることがあまりなかった。
同じ場所にいくとこがあっても、あえて違う道を通ったり、時間があれば遠回りして行ったりしていた。
新しい道での何か新しい発見をいつも楽しみにしていた。
保育園の送迎は、朝から遠回りしている時間もなく、ひたすら最短ルートを往復している。毎日同じ道をこんなにくりかえし通るのって久しぶりの経験だった。でも同じことをくりかえすことで、気づいたことがある。
それは毎日少しずつ変化する植物の表情。春は様々な花が咲き出し、初夏には若々しい緑、夏はぐんぐん背を伸ばし、秋には紅葉で綺麗な色を見せてくれる。最近は落ち葉が増えてきて木が寂しくなってきた。昨日みた景色と今日見た景色が少しだけ違っている。同じ道、同じ時間でも、同じ風景ではなく、全て一瞬一瞬で違うこと。保育園への道中、まだ会話できない息子にたくさん変化を伝えてきた。くりかえし同じ道を通ることで気づけた普段見過ごしてしまいそうな小さな変化たち。こどもの視点、こどもの感覚で、なるべくたくさんのことをわかるように伝えていきたい。いろんなことを吸収して、豊かな心を育んでいってほしいと思う。
大人の僕も、息子に毎日たくさんのことを学ばせてもらっている。
とてもありがたい。