Nobuto Osakabe Photographer

vol.17 『気づかせ屋』

監督業とは『気づかせ屋』である。
先日なくなった野村監督が言っていた言葉。

野村監督とはお会いしたことはないけど、監督という職のイメージだけで考えたら、とても意外だと思った。優れた監督って名将とか闘将とか言われていて、自らの戦術や采配、閃き、時には運などでチームに勝利を与える存在って勝手に思っていた。でも野村監督の『気づかせ屋』って自分の存在よりも周りの存在を大切に思っていて、そちらを優先して考えている発言だなぁってすごく思った。プロに入ってくるようなもともとの能力が高い地元じゃ一番みたいな選手たちを、さらに高い位置にまで持っていくってことはとても難しいことだと思う。その人をずーっと観察して、何かできて、何ができない、どう伝えたらもっと良くなるってわかるのも凄いことだけど、それを「教える」んじゃなくて「気づかせる」って尋常じゃなく深い。人から教えられたことってそんなに自分の奥深くまで浸透しないけど、自分で発見したことや学んだこと、感じたことってちゃんと自分に根を張ることができる。野村監督が考えていることってそうゆうことな気がする。

このことは「子育て」にも同じことが言えるなぁって思う。
子どもに何か伝えるってとても難しい。なかなか言うことを聞いてくれないし、こっちの思う通りになんか滅多にいかない。大人の感覚で物は言えないし、子どもはなんとなく察するとか空気を読むとかはできない。例えば、もう出かけなくてはいけない時間でも、平気で新しい絵本やおもちゃを出してくる。今片付けたばっかりなのに、一瞬で部屋が元通りになってしまう。健康のためにいろんなものを食べさせたいと思い、時間をかけて一生懸命作っても一口も手をつけない。保育園からの帰り道、暗く寒くなってきても帰りたがらず上着も着ない。数えだしたらキリが無いくらい日常的にこんなことが起こる。そうゆう時に、僕は子どもが自分から行動をしたくなるにはどうしたらいいんだろうなぁって考えるようにしている。上から命令するように教えるんじゃなくて、自ら楽しんでやるにはどうしたらいいんだろうなぁって。そのヒントの一つが『気づかせ屋』なのかなって思った。
子どもが自分から行動できるために、何かに気づかせてあげるカケラを自然と与えられるような親になりたいと思う。