Nobuto Osakabe Photographer

vol.22 ドライブ

今回は、息子と『二人だけ』で初めて車に乗った話。
自粛中ではあるが、妻は在宅で仕事をしなくてはいけない時がある。その時は、なるべく僕と息子は散歩に出かけたり、公園に行ったり、自転車であてもなくブラブラ走ったりして、家を空けるようにしている。でもそれにも飽きてしまったので、今日は車で少しだけドライブしてみようと思った。

思えば、息子と二人だけで車に乗るのは今日が初めてだ。家族で出かける時は、必ず僕と妻と息子の3人で車に乗る。僕が運転席、妻が後部座席の真ん中、息子が後部席の左側につけられたチャイルドシートに乗っている。
でも今日は僕と息子だけ。まず後部座席に二人で乗り、チャイルドシートに息子を乗せる。普段は抵抗する息子が今日は大人しく座ってくれた。第一関門クリア。シートベルトをちゃんと固定して、僕は運転席に向かいエンジンをかける。息子はお母さんが横にいないことをまだ気にしていない。車に乗れることを喜んでいる様子。車が進み出し、駐車場から公道に出た。そのまま普通に進み、斜め後ろを振り返って息子を気にしたが、まだいつもの普通の感じ。車でよく聞いているトーマスの歌を流すように催促までしてきた。僕は少しだけ緊張していたけど、意外と息子は余裕なんだなぁなんて思い始めたら、急に息子が不安な顔になった。出発してから5分後くらい。さっきまでの余裕が、一気になくなり、そわそわし始めた。おそらく、今のこの状況を急に理解したんだと思う。横にお母さんがいないことを。体を硬直させ、チャイルドシートを強く握っていた。それでも、息子は泣かずに前だけをみていた。しばらく走り、何回も通ったことがある道に少しだけ安心したのか対向車のバスに「バスッーーー!!」っていきなり叫んだ、そして隣にいるブルドーザーに向かって「ガーガーガー!!」っていつもの調子が完全に戻ってきたころで、ちょうど目的地に着いた。

今日は近所の物産所に行くために家を出た。新鮮な野菜や果物がたくさん売っているたまに行くところだ。駐車場に車を止め、歩きたがらない息子を抱っこして入り口に向かった。入り口の真ん中には、なぜか店員さんが立っていた。僕たちが入ろうとしたら、その店員さんが「本日は閉店しました。」と伝えてきた。えっまだ14:00なのに。普段は17:00までやっているそのお店もコロナの営業時間短縮のため閉店時間が14:00になっていた。こんなところでコロナの余波を受けるとは。行き場のなくなった僕たちは、次に電気屋さんに向かった。二人のドライブになれてきた息子は、とても大人しく座っていてくれた。走り出し数分で電気屋さんに到着し、二人で歩いて入り口に向かった。入り口にはカートがいくつも並んでいて、その中に車がついた子ども用のカートがあった。息子はそれを見つけると、即座にカートの運転席に飛び乗りハンドルを握った。後ろから僕が押さないと進まない構造だし、ハンドルも偽物なので、基本的に僕が操縦している。でも息子は自分が運転している気になって「ブーブーブー」と陽気に言っていた。バックのするときは「ピーピーピー」という。かなり気に入ったらしく、そんなに広くないお店の店内をぐるぐると何周も同じところを回らされた。店員さんたちも苦笑いだ。息子がA4くらいの値札を破ってしまい、店員さんに謝った。なかなか帰りたがらない息子に、オモチャコーナーで何か買おうかと思ったが、コロナのせいか品揃えが本当に悪く、気に入ったものが全くないのでオモチャ作戦は諦めた。ここでもコロナの影響を受けるとは。飽きるまで付き合うしかないと覚悟して、2時間は電気屋さんにいた。ぐるぐる回っている最中に気になったホームベーカリーのパンフレットだけ持って帰った。帰り道、息子は自分の運転に満足したのかご機嫌だった。駐車場に車を止めた瞬間、息子が「パンッ!!」って大きな声で叫んだ。ホームベーカリーのパンフレットに載っている写真を見たからだと思うけど、息子はパンが大好きだ。