Nobuto Osakabe Photographer

vol.23 根元

今週、緊急事態宣言が解除された。
少し希望の光が見えてきたけど、コロナウイルスが終息したわけでもワクチンや特効薬ができたわけでもないので、あまり晴々しい気持ちにはなれない。外食に行くのも気がひけるし、都内をブラブラ出歩くのは気が重いし、東京を出て他県に遊びに行く気にはならない。誰か人が近づいてくると内心穏やかでなくなり、少し構えてしまう。季節も移ろい気温も上がり、マスクの中が蒸れて口のまわりに汗をかく。いろいろともうしばらく我慢が必要なのかな。

自粛が解除されて嬉しい反面、少し寂しい気持ちもある。仕事や保育園が再開し、家族の形がまた変わってしまう。自粛生活の始めの頃は、ずっと一緒にいる家族に戸惑いもあったが、それにも慣れてきて「家族って本当はこうだよなぁ」なんて思ってしまえるくらい馴染んでしまった。そんな根本的な生活も一旦おしまいになる。それぞれが各々の居場所に戻っていくよう感じがして、少しだけシュンとした気持ちになる。でも、この一時期のとても貴重な時間を家族で過ごした経験はとても大きな財産になったと思う。

今回のコロナウイルスという未知との戦いは、良いように捉えれば、自分を見つめ直すいい機会になったと思う。僕に何が必要で、何がいらないのかを考えることができたし、改めて今自分が何をしたいのか、どうやって生きていくのかを再認識することができた。35歳にもなると頭にも体にも無駄な脂肪がついてきて、それが動きの邪魔をする。今、気になるのは知識や経験という名の脂肪。これを削ぎ落としていくことがこれから先にとても重要になると思った。2歳の息子を見ていてつくづくそう思う。知識や経験がまったくないことでも果敢にチャレンジしていく姿勢や失敗を繰り返しながら出来るようになっていく様、そして何よりも純粋に楽しむこと。笑うこと。大人になると子どものようにできなくなってしまいがちだけど、僕は子どものような身のこなしができるようになりたい。だから息子から多くのことを学んでいるし、息子と一緒に色々考えて成長していきたい。全ての子どもは、みんな先生だ。

緊急事態宣言が解除された日、家族でしゃぼん玉をした。公園には気持ちよく風が吹いていて、しゃぼん玉は縦横無尽に飛び回っていた。それを息子は汗を垂らしながら夢中になって追いかけまわしていた。なかなか帰らない息子の顔は、まっすぐな夕日を浴びて一段と輝いてみえた。
そして、今も息子は妻としゃぼん玉をしに公園へ出かけた。