Nobuto Osakabe Photographer

vol.24 ケーキを焼いた

今日は生まれて初めてケーキを焼いた日の話。
日頃から料理をする方なのでキッチンに立つことは多いけど、お菓子を作ったことは一度もなかった。僕の勝手なイメージだけど、お菓子作りは料理とは違ってノリで出来ない。ちゃんと決められた分量を計り、レシピに沿って作っていくのがお菓子作り。そんな繊細すぎる食べものを大雑把な性格の僕には絶対向いていないだろうと思っていた。

まず、クックパッドでレシピを探す。今思い出したのだが、以前スマホのホーム画面が近くにいた仕事関係の女性に見えてしまい、その人が「男性でクックパッドのアプリ入れている人ってあんまりいないですよ〜。」っていってきた。そうなのかな?僕は暇なとき次に作りたい料理をクックパッドでよく吟味している。その時間がわりと幸せ。話が脱線した。今日はお菓子作りだ。冷蔵庫にはふるさと納税で送られてきたパイナップルがある。これを使ったお菓子にしよう。甘くてとても美味しいから。バナナもある。じゃあ両方とも使おう。でもうちにはバターがない。今、スーパーにもどこにもバターがない。バターを使わないレシピを探そう。スマホをスクロールして探してみたが、ほとんどのお菓子レシピにバターが使われている。お菓子作りにはこんなにもバターが使われていたとは。何とかバターを使わないレシピを見つけたがHMという謎の単語がある。調べてみたら、ホットケーキミックスだった。ホットケーキミックスをHMと呼ぶのか、お菓子業界では。知らなかった。でもHMがうちにあるのを僕は知っている。妻が朝ごはんにホットケーキを焼いてくれて、その残りがあったのを覚えている。方向性が決まった。パイナップルとバナナとHMを使ったバターを使わないお菓子。でもパイナップルとバナナを使うレシピでいいのがない。一旦パイナップルを忘れて、バナナに絞ってみよう。あった。HMを使ったバターを使わないバナナパウンドケーキ。これだ。これにパイナップルを勝手に入れてみよう、パイナップルとバナナは相性がいいに決まっている。両方とも美味しいから。ついにレシピが決まった。レシピには[HM150g バナナ1本(完熟) 卵1個 牛乳大2 オリーブオイル大2 砂糖大3]と書いてある。もちろんパイナップルはない。冷蔵庫からバナナとパイナップルを取り出す。バナナが完熟ではない。でも大丈夫だろう、焼くのだから。焼いたら大概のものは柔らかくなる。大きなボールにバナナとパイナップルをいれフォークでつぶしていく。パイナップルから汁がたくさん出てジュースみたいになってきた。いいのだろうかこれで。そこに卵、牛乳、オリーブオイル、砂糖を入れ、フォークと計量スプーンを使って二刀流で混ぜる。簡単だ。ここにHMを入れる。戸棚からHMを取り出して袋をみたら200gと書いてある。どうしよう。レシピにはHM150gと書いてある。量りがいらない簡単パウンドケーキと書いてあったからこのレシピにしたのに。困った。200gの袋を開けて、150gだけ使うのか。余ったHM50gの使い道はあるのか。迷った挙句、そのままHM200gでいってみた。牛乳とオリーブオイルをちょっと増やせば大丈夫だろう。全部が混ぜ合わさったがモッタリしている。こんな感じで良いのか。わからないけどこんな感じで大丈夫だろう、多分。オーブンを予熱しよう。170℃にセットする。パウンドケーキの型にクッキングシートを敷く。でもやり方がわからない。調べたらyoutubeですぐに出てきた。動画でみれるなんて、便利な世の中だ。シートも綺麗にひけたから、ボールの中の種を型に流しこむ。ゴムヘラを使って残りが無いように。流し込んだ種を平らにしたら、そこに縦にスライスしたバナナを3本載せる。このバナナ3本が今回のポイントだ。並んだバナナに映える焦げ目が少しついて、プロっぽいのがやりたかった。オーブンの余熱が終わり、ついに最終工程。170℃で40分焼き上げる。僕の心配はバナナが丸焦げにならないか。バナナが焦げてきたらアルミホイルをのせるといいと書いている。ちゃんと見張っていよう。初めてだから失敗したくない。型をオーブンの中央に置き、スタートを押す。はじまった。ちょっとテンションが上がってきた。でも今から40分もある。落ち着いて待とう。洗い物をして、アイスコーヒーを飲んでのんびりする。半分の時間が経過した。オーブンを覗きにいく。しまったっ!クッキングシートの高さが高すぎて中が見えない。バナナの焦げが確認できない。これはピンチだ。失敗したくない。今から開けてクッキングシートをきるわけにはいかない。ここで大雑把さが出てしまった。型からクッキングシートが飛び出ているのはわかっていた。型に合わせて切るのが面倒だったからそのままいってしまった。でももうしょうがない。こうなったら最後までいこう。残りのコーヒーを飲み、そわそわしながら待つこと15分。焼き上がった。竹くしで刺してみて何もつかなければ完成と書いてある。竹くしがみつからない。竹くしなんかうちで見たことがない。しょうがない、細い箸で刺してみよう。勢いよく真ん中に箸をさした。何もつかない。完成か?でも真ん中に箸の穴が大きく空いてしまった。やっぱり竹くしが必要だった。ケーキの焼き色は美味しそうだ。焼くのはうまくいった。あとは味が気になる。切って食べてみよう。あれっ!待てよ、バナナがない!上にのせたはずの3本のバナナ。今の今まで忘れていたが、本来の目的であるあのかっこいい美味しそうに焦げたバナナがない。不思議だ。え、沈んだ!?そんなことある!?あるか。沈んだんだ。オーブンの中で消えるわけがない。まぁいいか。肝心なのは味だ。切って食べてみよう。でもまだ熱い。冷めるのを待つ。少し冷めてきたので端を切って食べてみた。うん、うまい。でもこの味、前に食べたことがある。ホットケーキだ。少しパサついたホットケーキみたいだ。でもうまいと思った。完成した。バナナはたまにわかるけど、パイナップルの存在が薄い。ほとんど繊維になってしまったみたいだ。つぶしすぎたのか。やっぱりお菓子はノリではできないのか。次はHMを使わないレシピに挑戦しよう。

その時、息子が散歩からちょうど帰ってきた。早速出来上がったケーキを食べさせてみた。むさぼるように喜んで食べてくれた。素手で。口の周りにたくさんの食べこぼしをつけている。口のなかの水分が奪われたのか、牛乳を欲し、与えたらすぐに一気飲みをした。一瞬で完食してくれた。作るのは時間がかかるのに食べるのはあっと言う間。息子はその1時間後の夕食でも、フードファイターになっていた。

こんな穏やかな1日が僕は好きだ。