Nobuto Osakabe Photographer

vol.27 枇杷

先日、雨の中を車で走っていると『ビワ 500円』という看板が見えた。本当にさりげない看板で、大半の人は気付かないと思う。でも僕はその哀愁漂う看板を目にして、口の中が枇杷の味になってしまった。看板の奥には、個人が営んでいるであろうと思われる果樹園と直売所がある。信号が青になり、そのまま果樹園を通り過ぎてしまったが、なぜか無性に枇杷が食べたくなり、少し進んだところでUターンをして果樹園に向かった。まだ朝の9時過ぎなのでお客さんは誰もいなかった。駐車場もがら空きだ。直売所の店頭には、お目当ての枇杷がある。赤ちゃんの頭くらいの大きさのザルに山盛り入った枇杷が300円。安っ!もう一つの大人の頭のザルは500円。これも安い。300円の方は大きさがバラバラで少し痛みだしているものが多いから安いとのこと。500円は玉子のLサイズくらいのものが25個くらい入っていて、傷がなく日持ちも割とするらしい。迷わず500円の方を買うことにした。このお店には、枇杷の種や枇杷の葉も売っていて、何に使うのか聞いてみたら、煮出してお茶にしたり、お風呂に入れると体に良いと言っていた。欲しかったら今から畑に行って切ってくるって言われたけど、雨も降っていたので丁重にお断りした。
家に帰り枇杷をよく洗い、一つ食べてみた。うん、うまい。自然な甘さがする。以前高級な枇杷をいただいたことがあるが、その枇杷の甘さに驚愕した。枇杷ってこんな甘くて美味しいんだと思ったのを覚えているが、今回の枇杷は少し懐かしくて野生の枇杷って感じ。甘みと酸味の調和が絶妙で、これはこれですごく美味しい。中学校の裏に生えていた枇杷を昼休みにこっそり食べて先生に怒られたのを思い出した。そんな甘酸っぱさだ。
息子が生まれてから果物をたくさん食べるようになったが、最近の果物全般に思うのは品種改良の成果で何を食べてもほとんどが完璧で完成されすぎている。素人感がなくなってしまい、プロのお味。たまにはプロ野球じゃなくて高校野球を欲する感じかな。僕は野球を全く見ないからあくまでイメージだけど。もう一つだけ食べて、残りは冷蔵庫で冷やしておいた。
夕方になり保育園から帰ってきた息子に、一つ枇杷を食べさせてみた。よく冷えた枇杷は先ほどより更に美味しくなっていて、息子も食い入るように夢中でがっついていた。多分初めて枇杷を食べたと思う。さっそく枇杷の味と枇杷という言葉を覚え「びぃっわぁ、びぃっわぁ」と連呼していた。そのまま食べても十分美味しいんだけど、この枇杷はヨーグルトと一緒に食べると格別に美味しい。枇杷の甘みと酸味にヨーグルトの酸味が掛け合わさって、眠っていた奥底の甘みが浮き上がってくる。超絶な美味。大袈裟に思うかもしれないけど本当に。
今日も息子は残り1つになった貴重な枇杷ヨーグルト食べて保育園に向かった。また買いに行きたいと思ったけど、我が家には沖縄から届いた王様のような貫禄のマンゴーが4つ待機している。熟れるのが待ち遠しい。