一人暮らしになって1週間が経った。帰宅しても家に電気がついていないのはいつぶりだろうか。玄関のドアをあけても僕の靴しかない。奥からは誰の声も聞こえてこない。いつも賑やかな我が家がシーンと静まり返っているのはとても不思議な感覚だ。置きっぱなしになった息子のストライダーが少し悲しげに見えてくる。
なぜ一人暮らしになったのかというと、揉め事があって妻が息子を連れて家を出て行ったから、ではない。第2子の出産のため妻が息子を連れて里帰りをしているからだ。先週妻の実家を訪れ、お別れをしてきた。別れの際、見送りに来てくれた息子はスーツケースをなかなか返してくれず(息子はスーツケースを押すことにはまっている)、出発の時間もあったので無理矢理スーツケースを取り返したら、息子は駅で大泣きをした。涙の別れになってしまった。そんなこともあり、一人での帰宅は余計に寂しく感じた。
国内外問わず仕事で家を空けることは多いけど、思えば僕が家を出ることばかりで、僕が家に残ることはなかった。だから一人きりで家にいるのは不思議な感覚。多分息子が生まれる際に、妻が里帰りしたとき以来なのかな。2年半以上も前の話だ。息子が生まれて、家のなかには物が増えたけど、息子が物を投げたりするから、ほとんど収納されていて見えるところに物が出ていない。必要最低限のものしかないため生活感がなく、とても綺麗に片付けられている。そんな家だから掃除もしやすく、少しでもゴミがあると気になってしまう。一人になった僕は、暇さえあればクイックルワイパーをしている。髪の毛やホコリって特に家にいなくても思った以上にたまっている。至るところを綺麗にして家を出た妻が帰ってくるまで、このクリーンな状態を保ちたいと思っている。
一人になって一番億劫に感じるのは食事だ。元々ご飯を作るのは嫌いではないから、家にいるときはなるべく自炊をしているけど、ついつい作りすぎてしまう。一人分の量を作るって結構面倒。いつもなら大量に作って常備しておけば、誰かが食べてくれる。今回もいつもの調子で常備しておけばいいやと思い、ひじきの煮物、ナスとピーマンの煮浸し、かぼちゃサラダ、こんにゃくと厚揚げの甘辛煮などをなるべく日持ちするを作ったけど、自分一人で全て食べきるのに1週間もかかってしまった。最近読んだ本に、「食事に費やす時間は、一緒に食べる人の数に比例する」ってみたいなことが書いてあり、とても実感している。一人での食事は本当にあっという間に終わる。会話もないし、ただ作って食べるだけみたいで食事としての楽しみがない。人と食べる食事はなぜか美味しく感じる。この一人きりの食事に楽しみを見いだせるのだろうか。
まだ始まったばかりの一人暮らしは思いのほか長く感じそうだ。
さっき干したばかりの洗濯物が、もうベランダで干からびてカラカラになっている。