いつもより遅く目覚め、外を眺めたら隣の公園が雪でほぼ真っ白になっていた。窓を開けると空気は冷たい、でも日差しが暖かい。これでは昼までに雪が溶けてしまうと思い、急いでシラスとおかかのおにぎりを作った。慌てて息子と食べ、暖かい格好に着替えて家を飛び出した。玄関の前は、雪が積もっているというよりは氷が張ってあるって感じで白くなっていた。息子が転んでは困るので、しっかりと手を繋いで歩いて公園に向かった。
冬の朝、白い雪、青空、誰もいない公園。ここ最近で一番心地いい時間だった。公園の奥に進んで行くと、ベンチには誰かが作った雪だるまがあった。雪が降ると『雪だるま』を作るのが定番なのはなぜだろう、今日1日でどんだけの数の雪だるまが東京で生まれるんだろう、なんて雪だるまのなんとも言えない表情を見ながら考えていた。息子はその雪だるまを真っ先に破壊した。その後、遊具に積もった雪を地面に落とすという遊びにはまる息子。素手でブルドーザーのように雪を落としていたから、手が真っ赤になって冷たくなっていた。手を拭いて温めてあげたら、すぐに違う遊具に向かって走って行った。その後ろ姿に、僕は雪の塊を投げた。急に2人雪合戦が始まった。息子は、右手でも左手でも雪を投げる。交互に投げているから、雪はあっちこっち変な方向に飛んでいった。まともに僕に当たらない。それでも必死に当てようと投げ続ける姿は、たくましく見えた。
家に戻り昼食をとり、窓の外を見るとやっぱり雪がほとんど無くなっていた。今日は特に予定がないので、家族で井の頭公園に行った。目的はスワンボート。息子とは2回乗ったことがあるけど、家族4人で乗るのは初めてだ。息子と2人で乗る時は、僕がずっと漕いでいなきゃいけなかったけど、今日は妻がいてくれたから少し余裕ができた。真冬の雪の日も関わらず、池にはたくさんのボートがあって、何度も他のスワンと衝突した。赤ちゃんのカモが何羽か気持ち良さそうに浮いていて、息子は喜んで見ていた。春になったらまた家族でボートに乗ってお花見をしたいなって思ったけど、その頃にはもう引越しをしているだろう。次に家族で井の頭公園にくるのは、いつになるんだろうか。そんな日が来るんだろうか。この街に住んで5年が経ったけど、ほんといい場所だったな、なんてキラキラした水面を眺めながら思いかえした。
ボートを降りたら、少し小腹が空いたので吉祥寺の天音でたい焼き2つとみたらし団子2本を買った。また井の頭公園に戻り、ベンチで食べることにした。相変わらず、息子の食い意地がすごい。妻がコーヒーを買いにいっている隙に、たい焼きを一つをたいらげた。みたらし団子のパックも自分が食べると言って離さない。美味しいものには目がないのは、誰の血を受け継いだんだろうか。
あんことみたらしを口の周りにべっとりとつけた息子の顔が、愛くるしい。